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糖尿病

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この記事では、糖尿病とは何か、1型と2型のそれぞれの違い、糖尿病になりやすい人の特徴、予防策、具体的な症状、三大合併症(神経障害、網膜症、腎症)、そして食事療法・運動療法・薬物療法といった治療法について詳しく説明します。血糖値が高い、喉が渇く、尿の量が多いなどの症状がある方はもちろん、健康診断で血糖値を指摘された方、家族に糖尿病の方がいる方など、ぜひこの記事を読んで糖尿病への理解を深め、健康管理に役立ててください。この記事を読めば、糖尿病の全体像を把握し、ご自身またはご家族の健康を守るための第一歩を踏み出せるはずです。

糖尿病とは

糖尿病とは、慢性的に血糖値が高い状態が続く病気です。血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことです。ブドウ糖は、私たちが活動するための主要なエネルギー源であり、食事から摂取した炭水化物が体内で分解されて生成されます。通常、食事をすると血糖値は一時的に上昇しますが、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きによって、ブドウ糖は筋肉や肝臓、脂肪細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されたり、グリコーゲンとして貯蔵されたりします。この作用により、血糖値は適切な範囲に保たれます。
しかし、糖尿病では、インスリンの分泌量が不足していたり、インスリンがうまく働かなかったりするために、ブドウ糖を効率よく利用することができず、血糖値が慢性的に高くなってしまいます。高血糖の状態が続くと、全身の血管や神経に障害が生じ、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。糖尿病は、初期段階では自覚症状がない場合も多いですが、放置すると失明や腎不全、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞など、深刻な合併症につながる可能性があるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。

糖尿病の診断基準

糖尿病の診断は、血糖値を測定することで行われます。具体的には、以下のいずれかの基準を満たした場合に糖尿病と診断されます。

検査項目 基準値
空腹時血糖値 126mg/dL以上
心臓機能の調節 心拍数や心収縮力を高めます。
75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT) 2時間値 200mg/dL以上
随時血糖値 200mg/dL以上 かつ糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿など)がある場合
HbA1c(NGSP値) 6.5%以上

これらの検査のうち、一つでも基準値を超えた場合は、糖尿病の可能性が高いと判断され、再検査が行われます。再検査でも同じ結果が出た場合、糖尿病と確定診断されます。

糖尿病の種類

糖尿病は大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病の2種類に分類されます。その他に、妊娠糖尿病やその他の特定の条件下で発症する糖尿病もあります。

1型糖尿病

1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど、あるいは全く分泌されなくなることで発症します。自己免疫疾患が原因となる場合が多く、遺伝的要因や環境要因も関わっていると考えられています。主な症状として、口の渇き、頻尿、体重減少、倦怠感などがあります。1型糖尿病の患者さんは、血糖値をコントロールするために生涯にわたるインスリン注射が必要です。幼少~若年期に発症するケースが多いですが、年齢を重ねてから発症する方もいます。

2型糖尿病

2型糖尿病は、インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性によって発症します。遺伝的要因に加え、過食、運動不足、肥満などの生活習慣が大きく関わっています。初期段階では自覚症状がない場合も多く、気づかないうちに病気が進行していることがあります。主な症状として、口の渇き、頻尿、体重減少、倦怠感など、1型糖尿病と同様の症状が現れることもあります。2型糖尿病の治療は、食事療法、運動療法を中心に行い、必要に応じて経口血糖降下薬やインスリン注射が用いられます。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見された糖代謝の異常をいいます。前述の一般的な糖尿病とは診断基準が異なり、より厳格なものになっています。妊娠中の糖代謝の異常は、巨大児や出産時の帝王切開などにつながる心配があるので、医師などから食事や生活の指導を受け、自己管理に努めることが大切です。分娩後は正常に戻ることが多いのですが、将来的に糖尿病が発症しやすいといわれており、定期的な検査が必要です。

その他の糖尿病

遺伝子の異常や、他の疾患が原因で発症した(二次性)糖尿病のことをいいます。他の疾患としては、膵臓疾患、ホルモン異常、肝疾患、薬剤や化学物質によるもの、感染症など様々なものがあります。

糖尿病になる原因

糖尿病は誰にでも起こりうる病気ですが、特定の要因を持つ人は発症リスクが高くなります。遺伝的要因や生活習慣など、様々な要素が複雑に絡み合って発症に至ると考えられています。以下に、糖尿病リスクを高める要因を詳しく解説します。

遺伝的要因

糖尿病は遺伝的な影響を受けやすい病気です。両親や兄弟姉妹に糖尿病患者がいる場合は、発症リスクが高くなります。特に2型糖尿病は遺伝的要因が強く、家族歴がある場合は特に注意が必要です。ただし、遺伝的要因だけで発症が決まるわけではなく、生活習慣の改善によって予防できる可能性も十分にあります。

年齢

加齢とともに糖尿病の発症リスクは上昇します。特に40歳以上になるとリスクが高まり、定期的な健康診断での血糖値チェックが重要になります。

肥満

体脂肪の増加、特に内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を高め、2型糖尿病の大きなリスク要因となります。ウエスト周囲径と内臓脂肪量には相関があると言われています。

食生活

糖質の過剰摂取、食物繊維の不足、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の多い食事は、糖尿病リスクを高めます。バランスの良い食事を心がけることが重要です。

運動不足

運動不足は肥満につながりやすく、インスリン抵抗性を高めるため、糖尿病の発症リスクを高めます。定期的な運動習慣を身につけましょう。

喫煙

喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を促進するため、糖尿病だけでなく、様々な合併症のリスクを高めます。禁煙は糖尿病予防にも重要です。

過度の飲酒

過度の飲酒は、肝臓への負担を増大させるだけでなく、肥満や高血糖にもつながり、糖尿病リスクを高めます。適度な飲酒を心がけましょう。

睡眠不足

睡眠不足は、食欲を調整するホルモンのバランスを崩し、過食や肥満につながる可能性があります。また、インスリン抵抗性を高めることも報告されており、糖尿病リスクを高める要因となります。

その他の要因

妊娠糖尿病の既往、高血圧、脂質異常症、特定の薬剤の使用なども糖尿病の発症リスクを高める要因となります。
上記以外にも、メタボリックシンドロームも糖尿病の大きなリスク要因です。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧、高血糖、脂質異常症のうち2つ以上を併せ持つ状態のことです。メタボリックシンドロームの方は、糖尿病だけでなく、心筋梗塞や脳卒中などのリスクも高いため、生活習慣の改善が非常に重要です。
ご自身に当てはまる項目が多い場合は、医療機関を受診し、専門医に相談することをお勧めします。早期発見・早期治療によって、重症化を防ぎ、健康な生活を送ることができます。

糖尿病の症状

糖尿病の症状は、血糖値が高い状態が続くことで引き起こされます。しかし、初期段階では自覚症状がない場合が多く、気づかないうちに病気が進行していることも少なくありません。そのため、定期的な健康診断や人間ドックを受けることが重要です。高血糖の状態が続くと、様々な症状が現れ始めます。代表的な初期症状と後期症状、また合併症による症状を以下に詳しく説明します。

初期症状

初期症状は比較的軽度で、見過ごされやすい傾向があります。しかし、これらの症状に気づき、早期に医療機関を受診することで、重症化を防ぐことができます。

症状 説明
口渇 喉が渇き、頻繁に水分を摂るようになります。
多尿 尿の量が増え、特に夜間のトイレの回数が増えます。
多飲 のどが渇くため、水分を多く摂るようになります。
倦怠感 体がだるく、疲れやすい状態が続きます。
体重減少 特に理由もなく体重が減少することがあります。
頻尿 トイレに行く回数が増えます。
空腹感 食事をしてもすぐにお腹が空きます。
皮膚の
かゆみ
皮膚が乾燥し、かゆみを感じることがあります。
傷の治りが遅い 小さな傷でも治りが遅くなります。

後期症状

高血糖状態が長く続くと、より深刻な症状が現れます。これらの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。

症状 説明
意識障害 意識がもうろうとしたり、昏睡状態に陥ることもあります。
脱水症状 多尿により体内の水分が失われ、脱水症状を引き起こします。
吐き気・
嘔吐
吐き気や嘔吐が起こることがあります。
腹痛 激しい腹痛が起こることがあります。
視力低下 糖尿病網膜症により視力が低下することがあります。
しびれ 糖尿病神経障害により手足のしびれが現れることがあります。

糖尿病の合併症

糖尿病は、様々な合併症を引き起こすことが知られています。これらの合併症は、放置すると深刻な健康問題につながる可能性があります。

糖尿病三大合併症

糖尿病の三大合併症とは、高血糖の状態が長く続くことで引き起こされる、神経、目、腎臓の合併症を指します。それぞれ糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症と呼ばれ、放置すると重篤な症状を引き起こす可能性があります。早期発見・早期治療が非常に重要です。

① 糖尿病神経障害

高血糖によって末梢神経が障害されることで起こります。症状は様々で、手足のしびれや痛み、感覚の鈍麻、便秘、下痢、立ちくらみ、発汗異常などが挙げられます。進行すると、足の潰瘍や壊疽につながることもあり、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

糖尿病神経障害の種類

糖尿病神経障害は、大きく分けて末梢神経障害、自律神経障害、局所性神経障害の3つに分類されます。

種類 症状
末梢神経
障害
手足のしびれ、痛み、感覚麻痺など
自律神経
障害
便秘、下痢、立ちくらみ、発汗異常、ED、排尿障害など
局所性
神経障害
顔面神経麻痺、手根管症候群など

② 糖尿病網膜症

網膜の血管が高血糖によって損傷を受け、視力低下や失明につながる合併症です。初期には自覚症状がない場合が多く、定期的な眼科検診が重要です。進行すると、網膜剥離や硝子体出血などを引き起こし、失明に至ることもあります。血糖コントロールに加え、レーザー治療や硝子体手術などの適切な治療が必要です。

糖尿病網膜症のステージ

糖尿病網膜症は、単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症の3つのステージに分けられます。それぞれに適切な治療法があります。

ステージ 症状 治療法
単純
網膜症
無症状のことが多い。眼底検査で微小動脈瘤、出血、硬性白斑などが認められる。 血糖コントロールの徹底
前増殖
網膜症
綿花様白斑、静脈異常などが認められる。 レーザー治療
増殖
網膜症
新生血管、硝子体出血、網膜剥離などが認められる。視力低下が顕著になる。 レーザー治療、硝子体手術

③ 糖尿病腎症

高血糖が続くことで腎臓の糸球体が損傷し、腎機能が低下する合併症です。初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると蛋白尿やむくみ、高血圧などが現れ、最終的には人工透析が必要となることもあります。早期発見のためには、定期的な尿検査が不可欠です。血糖コントロール、血圧コントロール、食事療法などが治療の中心となります。

糖尿病腎症のステージ

糖尿病腎症は、腎症の重症度によってステージ分類されます。ステージが進むにつれて腎機能は低下していきます。

ステージ 症状
第1期 高濾過。腎臓の機能が過剰に亢進している状態。
第2期 正常アルブミン尿期。微量のアルブミンが尿中に排出される。自覚症状はほとんどない。
第3期 微量アルブミン尿期。尿中アルブミン排泄量が増加。自覚症状はほとんどない。
第4期 顕性アルブミン尿期。多量のアルブミンが尿中に排出される。むくみや高血圧が現れることがある。
第5期 末期腎不全。腎機能が著しく低下し、人工透析が必要となる。

これらの三大合併症以外にも、糖尿病は動脈硬化を促進するため、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクを高めます。日頃から血糖値を適切に管理し、合併症の予防に努めることが重要です。定期的な検査を受け、医師の指示に従って適切な治療を受けるようにしましょう。

糖尿病の治療法

糖尿病の治療法は、大きく分けて食事療法、運動療法、薬物療法の3つがあり、これらの療法を患者さんの病状や生活習慣に合わせて組み合わせることが重要です。血糖コントロールを良好に保ち、合併症を防ぐことを目指します。

食事療法

食事療法は糖尿病治療の基本です。適切なエネルギー量と栄養バランスを保ちながら、血糖値を急激に上昇させない食事を心がけます。具体的には、以下の点に注意します。

  • 適切なカロリー摂取:肥満の方は減量を目指し、やせ型の方は適切なカロリーを摂取します。
  • 栄養バランス:炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスの良い食事を心がけます。特に炭水化物の摂取量と質に注意が必要です。
  • 規則正しい食事:毎食ほぼ同じ時間に、規則正しく食事を摂ることが大切です。欠食やドカ食いは避けましょう。
  • 食物繊維の摂取:食物繊維は血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。野菜、海藻、きのこなどを積極的に摂取しましょう。
  • GI値を考慮:GI値とは、食品が血糖値を上昇させる速度を示す指標です。GI値の低い食品を選ぶように心がけましょう。
  • 食塩の制限:食塩の過剰摂取は高血圧のリスクを高めます。1日6g未満を目標に減塩を心がけましょう。

運動療法

運動療法も糖尿病治療に欠かせません。適度な運動は、インスリン感受性を高め、血糖コントロールを改善する効果があります。また、肥満の解消、血圧やコレステロール値の改善にも役立ちます。無理のない範囲で、以下の運動を継続的に行うことが推奨されます。

  • 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、1回30分以上、週に3回以上行うのが理想です。
  • 筋力トレーニング:スクワット、腕立て伏せなど、週に2回程度行うと効果的です。
  • 日常生活活動の増加:階段を使う、エレベーターを使わずに歩くなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことも大切です。

運動を行う際には、低血糖に注意し、事前に医師に相談することが重要です。

薬物療法

食事療法や運動療法で血糖コントロールが十分でない場合、薬物療法が用いられます。経口血糖降下薬(内服薬)、または注射製剤があり、患者さんの病状や他の病気の有無などを考慮して、医師が適切な薬を選択します。

経口血糖降下薬

薬剤の種類 作用機序
SUL剤(スルホニルウレア剤) 膵臓からのインスリン分泌を促進
ビグアナイド剤 肝臓からの糖新生を抑制、筋肉での糖の取り込みを促進
DPP-4阻害剤 インクレチン効果を増強し、インスリン分泌を促進、グルカゴン分泌を抑制
SGLT2阻害剤 腎臓での糖の再吸収を阻害し、尿糖排泄を促進
チアゾリジン
誘導体
インスリン抵抗性を改善
αグルコシダーゼ阻害剤 糖質の消化吸収を遅延
GLP-1受容体作動薬 インクレチンと同じように作用し、インスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、食欲抑制効果

インスリン注射

インスリンを注射で補充する治療法です。主に1型糖尿病の患者さんに使用されますが、2型糖尿病の患者さんにも使用される場合があります。インスリン製剤には、超速効型、速効型、中間型、持効型、混合型など様々な種類があり、患者さんの状態に合わせて使い分けられます。

GLP-1受容体作動薬

この薬剤には前述の内服薬の他、注射製剤もあります。インスリン製剤と同様にいくつか種類があり、使い分けが必要です。

これらの治療法を適切に組み合わせ、血糖コントロールを良好に保つことで、糖尿病の合併症を予防し、健康な生活を送ることが可能になります。定期的な検査と医師との相談が重要です。
また、こちらに記した内容は一部の内容ですので、さらに詳しい情報が知りたい方や分からないところがある方は気軽にご相談ください。

髙井 久仁庸
診療内容 一般内科、糖尿病外来、内分泌内科、甲状腺内科、健康診断、予防接種、自費診療
〒247-0055
鎌倉市小袋谷1-9-18 
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